GEO専門エージェンシーのGo Fish Digitalが、自社サイトに4つのGEOレバーを適用した結果、AI検索経由トラフィックが43%増加し、コンバージョンは83.33%増加しました。 AIリファラーのCVRは従来検索の25倍に達しています。 同社が実践した「プロンプトマッピング」「ベンチマーク計測」「ファクトデンスコンテンツ」「クエリ拡張」の4レバーフレームワークを分析します。
事例の概要
Go Fish Digitalはバージニア州に本社を置くデジタルマーケティングエージェンシーです。 SEO、デジタルPR、コンテンツマーケティングを主力サービスとしており、近年GEO(Generative Engine Optimization)を新たなサービスラインとして展開しています。
今回の事例は、Go Fish Digitalが自社のWebサイトに対してGEO施策を実施し、その結果を公開したものです(出典:Go Fish Digital Blog, 2025)。
主要な成果指標は以下の通りです。
| 指標 | 変化 |
|---|---|
| AI検索経由トラフィック | +43% |
| AI検索経由コンバージョン | +83.33% |
| AIリファラーCVR(対従来検索比) | 25倍 |
実施した施策
Go Fish Digitalは、GEO施策を4つのレバーに分解して実行しています。
レバー1:プロンプトマッピング
ユーザーがAI検索でどのようなプロンプト(質問文)を入力するかを調査し、それに対応するコンテンツを設計する手法です。 従来のキーワードリサーチに相当しますが、検索クエリではなく自然言語の質問文を対象とします。
具体的には、ChatGPTやPerplexityに「GEO agency」「generative engine optimization services」などのプロンプトを入力し、どのような回答が生成され、どのサイトが引用されているかを調査しています。
レバー2:ベンチマーク計測
自社と競合が、主要なAI検索プロンプトに対してどの程度引用されているかを定量的に計測します。 定期的にプロンプトを実行し、引用回数・引用順位・引用文の内容を記録することで、施策の効果を追跡する基盤を構築しています。
レバー3:ファクトデンスコンテンツ
AIが引用しやすい「事実密度の高いコンテンツ」を作成する施策です。 具体的な数値、統計データ、調査結果、手順を含むコンテンツは、AIが回答を生成する際に引用元として選ばれやすいとされています。
Go Fish Digitalは、自社のケーススタディやリサーチデータを含むコンテンツを増やし、AIが抽出しやすい形式(箇条書き、テーブル、明確な見出し構造)で公開しています。
レバー4:クエリ拡張
1つのトピックに対して、関連する複数のプロンプトパターンをカバーするコンテンツ戦略です。 たとえば「GEOとは何か」だけでなく、「GEOとSEOの違い」「GEO対策の方法」「GEOの効果測定」など、周辺のクエリにも対応するコンテンツを体系的に作成しています。
数字の読み方
この事例の数字を評価する際、最も重要な注意点があります。
まず、Go Fish DigitalはGEOサービスを販売するエージェンシーです。 自社のサービスを宣伝するための事例公開であり、バイアスの存在を前提として読む必要があります。 成功事例を選択的に公開している可能性は排除できません。
次に、絶対数が非公開です。 「AIトラフィック+43%」「コンバージョン+83.33%」は増加率で表現されていますが、基準値が開示されていません。 仮にAI検索経由の月間コンバージョンが6件から11件に増えた場合でも+83.33%にはなります。 エージェンシーサイトの特性上、月間のリード数はそもそも多くないと推測されます。
また、83.33%という小数点付きの増加率は、元の数字が小さいことを示唆しています。 整数で割り切れる数字(例:6→11で83.33%)の可能性が高いです。
CVR 25倍についても、前述のAhrefs事例やSeer Interactive事例と同様、AI検索トラフィックの母数が小さいためにCVRが高く出やすい構造的バイアスがあります。
計測期間も明確に記載されていません。 どの期間の施策前後を比較したのか、季節変動は考慮されているかなど、検証に必要な情報が不足しています。
日本のマーケティング企業で再現する場合の設計
Go Fish Digitalの4レバーフレームワークは、手法として参考にできます。 ただし、日本語市場に合わせた翻案が必要です。
プロンプトマッピングの日本語対応
英語圏のプロンプトマッピングをそのまま日本語に翻訳しても機能しません。 日本語ユーザーのAI検索での質問パターンは英語とは異なります。
実務的な手順は以下の通りです。
- 自社のサービスに関連するキーワードをリストアップする
- ChatGPT、Perplexity、Geminiのそれぞれに日本語で質問を入力する
- 回答内容と引用されているサイトを記録する
- 自社が引用されていない質問を特定し、対応コンテンツの有無を確認する
- 不足しているコンテンツを優先的に作成する
質問文は「〇〇とは」「〇〇の方法」「〇〇と△△の違い」「〇〇 おすすめ」など、日本語特有のパターンで網羅します。
ベンチマーク計測の仕組み化
手動でAI検索にプロンプトを入力して確認する方法は、初期段階では有効です。 ただし、継続的な計測にはツール化が必要です。
スプレッドシートで以下の項目を管理します。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| プロンプト | 計測対象の質問文 |
| プラットフォーム | ChatGPT / Perplexity / Gemini |
| 自社引用の有無 | はい / いいえ |
| 引用順位 | 何番目に引用されているか |
| 引用テキスト | AIが抜粋したテキスト |
| 計測日 | yyyy-mm-dd |
月次で同じプロンプトを実行し、引用状況の変化を追跡します。 APIを使った自動化も可能ですが、まず手動で月次20〜30プロンプトから始めるのが現実的です。
ファクトデンスコンテンツの作成方針
日本語のB2Bコンテンツでは、数値や事例を含むコンテンツが不足しがちです。 以下の要素を意識的に含めることで、AIに引用されやすいコンテンツになります。
- 具体的な数値(費用、期間、人数、成果)
- 比較テーブル(ツール比較、手法比較)
- 手順の箇条書き(ステップ1、ステップ2…)
- 出典の明記(調査レポート、公式ドキュメント)
抽象的な概念説明ではなく、「何を」「いつ」「どれだけ」を具体的に書くことが重要です。
クエリ拡張の実行計画
1つのテーマに対して3〜5本のコンテンツを体系的に作成します。 たとえば「GEO対策」をテーマにする場合は以下のように展開します。
- GEO対策とは(定義と基本概念)
- GEOとSEOの違い(比較)
- GEO対策の具体的な方法(手順)
- GEO対策の効果測定(KPI)
- GEO対策の事例(ケーススタディ)
これらのコンテンツを内部リンクで接続することで、AIが関連情報を取得しやすい構造を作ります。
よくある質問
Q1. 4つのレバーの中でどれを最初に取り組むべきですか
プロンプトマッピングです。 現状で自社がどのような質問に対してAI検索で引用されているか(されていないか)を把握しないと、施策の優先順位が決められません。 主要な質問20〜30個の引用状況を調べることから始めてください。
Q2. Go Fish Digitalと同じ結果を日本語サイトで期待できますか
数値の再現は期待すべきではありません。 Go Fish DigitalはGEO専門エージェンシーとしてのポジションを持っており、「GEO」に関するプロンプトで引用されやすい立場にあります。 一般企業が同じ増加率を得られるかは、業種、競合状況、コンテンツの蓄積量に依存します。
Q3. プロンプトマッピングとキーワードリサーチの違いは何ですか
キーワードリサーチは検索ボリュームに基づく「需要量」の調査です。 プロンプトマッピングは、AIがどのように回答を生成するかという「引用構造」の調査です。 検索ボリュームがゼロのプロンプトでも、AI検索で頻繁に使われる質問パターンは存在します。 両方を並行して行うのが理想です。
まとめ
Go Fish Digitalの事例は、GEO施策を4つのレバー(プロンプトマッピング、ベンチマーク計測、ファクトデンスコンテンツ、クエリ拡張)に分解して実行した実践例です。 AI経由トラフィック+43%、コンバージョン+83.33%、CVR 25倍という結果を報告しています。
ただし、GEOサービスを販売するエージェンシーの自社事例であり、絶対数が非公開である点、計測期間が不明確な点は、数字の解釈に注意が必要です。
日本の企業がこのフレームワークを活用する場合は、まずプロンプトマッピングから着手し、自社に関連する質問での引用状況を把握することが出発点になります。