米国のデジタルマーケティングエージェンシーSeer Interactiveが、複数クライアントサイトのAI検索トラフィックを横断分析し、プラットフォーム別のCVRを公開しました。 ChatGPT経由のCVRは15.9%でGoogle Organicの1.76%と比較して約9倍、Perplexityは10.5%で約6倍という結果です。 計測期間は2024年10月から2025年4月の7か月間です。

事例の概要

Seer Interactiveはフィラデルフィアに本社を置くデジタルマーケティングエージェンシーで、SEO・PPC・アナリティクスを主力サービスとしています。 今回の分析は、同社が担当する複数のクライアントサイトを横断して、AI検索プラットフォームからのリファラートラフィックを集計したものです(出典:Seer Interactive, 2025)。

計測対象のAIプラットフォームはChatGPT、Perplexity、Claude、Geminiの4つです。 これらからの合計セッション数は約11,000に対し、Google Organicは約1,400万セッションでした。

プラットフォーム別のCVR比較は以下の通りです。

プラットフォームCVRページ/セッション
ChatGPT15.9%2.3
Perplexity10.5%—
Claude5.0%—
Gemini3.0%—
Google Organic1.76%1.2

ChatGPTユーザーは1セッションあたり平均2.3ページを閲覧しており、Google Organicの1.2ページと比較して、サイト内の回遊が多い傾向が確認されています。

実施した施策

Seer Interactiveが行ったのはGEO施策ではなく、GA4データの分析です。 具体的には以下のアプローチで計測しています。

また、ChatGPT経由のトラフィックに関して6つの知見を報告しています。

  1. AI検索トラフィックは全体の0.07%に過ぎない
  2. しかしCVRはGoogle Organicより大幅に高い
  3. ChatGPTユーザーはサイト内を回遊する傾向がある
  4. AI検索経由のCVは主にボトムファネルのページで発生している
  5. ブランド認知のあるサイトほどAI検索で引用されやすい
  6. AI検索トラフィックは月次で増加傾向にある

数字の読み方

この分析で最も注意すべきは、サンプルサイズの圧倒的な非対称性です。

AI検索経由のセッションは合計約11,000に対し、Google Organicは約1,400万セッションです。 比率にすると0.07%であり、AI検索のCVRはごく少数のサンプルから算出されています。 ChatGPTのCVR 15.9%は、母数が数千セッション程度であることを意味します。

統計的な観点では、数千セッションのCVRと1,400万セッションのCVRを直接比較するのは慎重さが必要です。 AI検索トラフィックが増加した場合、CVRは平均回帰によって低下する可能性が高いと考えるべきです。

次に、「複数クライアントの横断分析」とありますが、クライアントの業種・商材・CVポイントの定義は公開されていません。 eコマースのCVR(購入)とB2B SaaSのCVR(資料請求)では、前提が全く異なります。 業種別の内訳が不明なため、どのような商材で特に高い効果が出ているかは判断できません。

さらに、Seer Interactive自体がデジタルマーケティングエージェンシーです。 クライアントサイトはSEO最適化が進んでいる可能性が高く、一般的なWebサイトとはコンテンツの質が異なります。 AI検索に引用されやすい条件が整っている母集団のデータである点は考慮すべきです。

日本のデジタルマーケティング担当者が再現する場合の設計

Seer Interactiveの分析から得られる最大の実務的示唆は、「GA4でAI検索リファラーを分離する設定を今すぐ行うべき」という点です。

GA4でのAIリファラーフィルター設定

GA4のカスタムチャネルグループを作成し、AI検索プラットフォームを独立チャネルとして設定します。

設定するリファラードメインは以下です。

プラットフォームリファラードメイン
ChatGPTchatgpt.com, chat.openai.com
Perplexityperplexity.ai
Claudeclaude.ai
Geminigemini.google.com
Copilotcopilot.microsoft.com

GA4の管理 > データの表示 > チャネルグループから「カスタムチャネルグループ」を作成します。 条件には「セッションのソース」を使い、上記ドメインを正規表現でchatgpt\.com|chat\.openai\.com|perplexity\.ai|claude\.ai|gemini\.google\.com|copilot\.microsoft\.comと指定します。

CVイベントの設計

AI検索経由のCVRを計測するには、GA4のキーイベント設定が必要です。 日本のB2Bサイトであれば、以下のイベントを最低限設定します。

キーイベントとチャネルグループを掛け合わせることで、Seer Interactiveと同様のプラットフォーム別CVR分析が可能になります。

サンプルサイズへの対処

日本語市場ではAI検索トラフィックの絶対量が英語圏よりさらに少ないため、月次でのCVR算出は統計的に不安定になります。 対処法は以下の通りです。

プラットフォーム別の優先順位

Seer Interactiveのデータでは、ChatGPT経由のCVRが最も高い結果でした。 日本市場でも、ChatGPTの利用率はAI検索プラットフォームの中で最も高い水準にあります。

ただし、各プラットフォームの検索ソースが異なるため、対策も異なります。 ChatGPTはBing検索がベースのため、Bing Webmaster Toolsでのインデックス状況を確認してください。 PerplexityはPerplexityBotという独自クローラーを運用しているため、robots.txtでブロックしていないかの確認が必要です。

よくある質問

Q1. AI検索トラフィックが全体の0.07%なら、ROIに見合う施策なのでしょうか

現時点ではROIの判断が難しい段階です。 ただし、GA4のチャネル設定自体は30分程度で完了する作業であり、計測体制の構築コストは低いです。 まず計測を開始し、3か月後にデータを見て判断するのが合理的です。

Q2. ChatGPTのCVRが他のプラットフォームより高い理由は何ですか

Seer Interactiveの分析では明確な理由は示されていません。 推測としては、ChatGPTの対話形式が購買検討プロセスに適していること、ChatGPTユーザーの方がリテラシーが高く購買意欲のあるユーザーが多い可能性が考えられます。 プラットフォームごとのユーザー属性の違いが影響している可能性が高いです。

Q3. 日本語サイトでも同様の傾向は確認されていますか

2025年時点で、日本語サイトに特化したAI検索CVRの公開データは確認されていません。 だからこそ、自社サイトで計測を始め、自社固有のベンチマークを持つことに価値があります。 日本語市場の一次データを蓄積することは、競合に対する情報優位にもなります。

まとめ

Seer Interactiveの分析は、AI検索トラフィックのCVR優位性を複数サイトの横断データで示した点で価値があります。 ChatGPT経由CVR 15.9%、Google Organic 1.76%という差は、AI検索が購買意欲の高いユーザーを送客している可能性を示唆しています。

ただし、11,000セッション対1,400万セッションというサンプルサイズの非対称性、業種別の内訳が非公開である点、SEO最適化が進んだクライアントサイトの母集団である点は、数字を解釈する際に考慮が必要です。

日本の企業がまず取り組むべきは、GA4のカスタムチャネルグループでAI検索リファラーを分離し、自社のプラットフォーム別CVRを計測する体制の構築です。 30分の設定作業が、今後のAI検索マーケティング戦略の基盤になります。