ChatGPTに自社名を入力したとき、どのような回答が返ってくるかを確認したことはあるでしょうか。 多くのマーケティング担当者が一度は試みますが、定期的にチェックし、変化を追跡している企業はまだ少数です。

この記事では、ChatGPTにおける自社ブランドの言及状況を定期的にチェックし、結果を記録・分析するための実務手順を解説します。

なぜChatGPTでの自社言及を確認すべきなのか

ChatGPTは月間数億人が利用するAIサービスです。 ユーザーがChatGPTに「〇〇とは」「〇〇 おすすめ」と質問した際、回答に自社が含まれるかどうかは、ブランド認知とリード獲得に直接影響します。

従来のSEOでは、Google検索での自社の表示状況をSearch Consoleで確認できました。 しかしChatGPTには、自社の言及状況を確認するための公式ツールがありません。 手動でのチェックが、現時点で最も確実な方法です。

ChatGPTの回答は固定ではありません。 モデルのバージョンアップ、Web検索機能のアップデート、RAGインデックスの変更によって、先週は自社が言及されていたクエリで今週は言及されなくなるということが起こります。 定期チェックは、こうした変動を早期に検知するために必要です。

チェック用プロンプトの設計

ChatGPTでの自社言及をチェックするには、適切なプロンプトを設計する必要があります。 日常会話のような質問ではなく、ユーザーが実際に入力しそうなクエリに近いプロンプトを使います。

カテゴリ1:ブランド直接クエリ

自社名やサービス名を直接含むクエリです。 以下のようなプロンプトを用意します。

これらのプロンプトで、ChatGPTが自社について正確な情報を回答しているかを確認します。 誤った情報(サービス内容の誤り、料金の誤り、存在しない機能の記述など)がないかも確認します。

カテゴリ2:カテゴリ推薦クエリ

自社が属するカテゴリで、推薦やランキングを求めるクエリです。

これらのクエリで自社が推薦リストに含まれるかどうかが、AI検索におけるブランドの認知度を示す指標になります。

カテゴリ3:専門知識クエリ

自社が専門性を持つ領域に関する質問です。

これらのクエリに対する回答で、自社コンテンツが情報源として引用されるかを確認します。 ChatGPTのWeb検索モードを有効にして確認すると、引用元リンクも表示されます。

カテゴリ4:ネガティブチェッククエリ

自社に関するネガティブな情報がChatGPTの回答に含まれていないかを確認するクエリです。

ネガティブな回答が返ってきた場合、その内容が事実に基づくものか、誤情報に基づくものかを確認します。 誤情報の場合は、元のコンテンツを修正することで改善できる可能性があります。

プロンプトリストの管理

プロンプトは一度作って終わりではなく、継続的に管理・更新します。

プロンプトリストの形式

スプレッドシートまたはYAMLファイルでプロンプトリストを管理します。 各プロンプトに以下の情報を付与します。

プロンプト数の目安は、全カテゴリ合計で20〜40個です。 多すぎるとチェック工数が膨大になり、少なすぎると見落としが発生します。

プロンプトの更新タイミング

月1回、以下の観点でプロンプトリストを見直します。

新しいサービスや機能をリリースした場合、関連するプロンプトを追加します。 業界で新しいトレンドが発生した場合、そのトレンドに関連するプロンプトを追加します。 3か月連続で同一の結果が出ているプロンプトは、重要度を下げるか削除を検討します。

チェックの実行手順

事前準備

チェック専用のChatGPTアカウントを用意します。 日常業務で使用するアカウントは、過去の会話履歴や設定がパーソナライズに影響する可能性があるため、チェック用とは分離します。

チェック時はブラウザのシークレットモードでChatGPTにアクセスするか、チェック専用アカウントでログインします。

実行のポイント

各プロンプトは「新しいチャット」で実行します。 前のプロンプトの回答が次の回答に影響しないよう、1プロンプトごとにチャットを新規作成します。

Web検索モードのオン/オフ両方で確認します。 Web検索がオフの場合は、ChatGPTの学習済みデータに基づく回答(自社がモデルの知識に含まれているか)を確認できます。 Web検索がオンの場合は、リアルタイムのWeb検索結果に基づく回答(自社コンテンツがRAGで取得されるか)を確認できます。

同じプロンプトを2〜3回実行し、回答の安定性を確認します。 毎回同じ回答が返る場合と、実行のたびに回答が変わる場合があります。

結果の記録方法

チェック結果は、以下の形式でスプレッドシートに記録します。

記録カラム

スクリーンショットの保存

回答のスクリーンショットは、フォルダに日付ごとに整理して保存します。 テキストのコピーだけでなくスクリーンショットも保存しておくと、UIの変更や引用の表示形式の変化も追跡できます。

ファイル名の命名規則を統一します。 例:2025-08-08_prompt-01_web-on.png

定期実行の自動化

手動チェックの工数を削減するため、一部の工程を自動化します。

OpenAI APIを使った自動チェック

OpenAIのAPIを使えば、プロンプトの入力と回答の取得をプログラムで自動化できます。

自動化スクリプトの構成は以下のとおりです。

自動化の注意点

APIの回答とChatGPT Web UIの回答は、完全に同一とは限りません。 Web検索の有無、モデルバージョン、システムプロンプトの違いにより、回答が異なる場合があります。

そのため、APIによる自動チェックはあくまで傾向の把握に使い、重要なプロンプトについては月1回のWeb UIでの手動チェックも併用します。

実行スケジュール

APIによる自動チェック:週1回(全プロンプト)。 Web UIでの手動チェック:月1回(重要度「高」のプロンプトのみ)。

この組み合わせにより、工数を抑えつつ正確な追跡を維持できます。

結果の分析方法

蓄積したデータを分析し、GEO施策の改善に活かします。

時系列分析

各プロンプトの言及有無を時系列で並べ、変動のパターンを確認します。

特定の時期に複数のプロンプトで同時に変動が発生した場合、ChatGPTのモデルアップデートが原因である可能性が高いです。 OpenAIのリリースノートと照合して原因を特定します。

特定のプロンプトだけで変動が発生した場合、自社コンテンツの変更や競合のコンテンツ追加が原因である可能性があります。

カテゴリ別分析

プロンプトカテゴリ別の言及率を算出し、どのカテゴリでの認知が弱いかを特定します。

ブランド直接クエリでの言及率が低い場合:ChatGPTが自社ブランドを十分に認識していない状態です。 Web上での自社ブランドの露出を増やす施策が必要です。

カテゴリ推薦クエリでの言及率が低い場合:競合が優先的に推薦されている状態です。 競合がどのような情報源に基づいて推薦されているかを分析します。

専門知識クエリでの引用率が低い場合:自社コンテンツがAI検索の情報源として認識されていない状態です。 コンテンツの構造化、データの追加、権威性の強化を検討します。

競合との比較

カテゴリ推薦クエリの回答で、自社と競合がどのように言及されているかを比較します。

比較のポイントは以下のとおりです。

誤情報への対処

ChatGPTが自社について誤った情報を回答しているケースは珍しくありません。 サービス内容の誤り、旧料金プランの回答、企業情報の誤り、競合との混同などが典型的なパターンです。

対処手順は3つです。 まず自社サイト上の情報が最新かつ正確かを確認し、古ければ更新します。 次に構造化データ(JSON-LD)でOrganization、Product、Serviceの情報を機械可読な形式で明示します。 最後に、Wikipediaやビジネスディレクトリなど外部情報源の記載を確認し、誤りがあれば修正を申請します。

月次レポートと長期施策

チェック結果は月次レポートにまとめ、マーケティングチームだけでなくPR・広報チーム、プロダクトチームにも共有します。 レポートには、カテゴリ別の言及率(前月比)、新規言及・言及喪失の詳細、誤情報の対処状況、競合サマリー、翌月のアクションアイテムを含めます。

長期的には、Web上でのブランド露出を増やすことがChatGPTでの言及改善につながります。 業界メディアへの寄稿、プレスリリースの配信、カンファレンスでの登壇が具体的な手段です。

AuthorityBench(2025)の研究によると、独自データに基づくレポートや専門家による執筆を含むコンテンツは、AI検索で引用される確率が高い傾向があります。 チェック体制の構築にかかる初期工数は1〜2日、月次の運用工数は2〜4時間が目安です。